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リンドウと桔梗 6~12編 (全12編)


その6.、リュウタン様伝説・桔梗
老婆は大きな石の上に腰掛けてゆっくりと話を切り出した。
丁度 陽は頭の上にあり昼を迎えていた。
玄黒は老婆が用意してきたふんわりと
白米だけで握られた極めて美味しいおにぎりを
感激しながら頬張っているうちに冷えていた身体が
一気に温まってくるのを感じた。そして
今朝から起こった夢のような出来事
を思い起こし改めて老婆に再度礼を言い
夢中になって話を聞いたのだった。
それは昔京都で生まれ育った「桔梗」という
都でも稀な絶世の美女の話から始まり
彼女の命を救った草の神・カヤノヒメの孫の
(竜胆・リュウタン)という神との恋物語であった。
桔梗は元々京都の高貴な公家の家で生まれ
伸び伸びと素直に育った娘であった。
そしてこれほど美しく清らかな娘は
おそらくこの国にいなかろうと思われるほどの
美貌に加えて極めて気立ても良いので
女房として御所で務めるようになると
御所で働く多くの女官はもとより女御や更衣達からも
一目置かれる存在となり
将来は入内するかもと噂されるほどの
落ち度のない娘であった。
ところが
「允恭帝の治世」に兄妹の近親相姦が発覚された時に
伊予国に島流しされた「軽大娘皇女」(かるのおおいらつめ)とは
子供の頃より姉妹同然と言われるほど親しい中であった事が災いし
この二人の仲をひどく妬む権力者の娘で
邪悪な性格の更衣がいて
兄妹の近親相姦に
桔梗が深く絡んでいると偽の噂を流したことから
あらぬ疑いをかけられ彼女は
この陸奥に幽閉されてしまっていたのだった。
心根優しい若い美貌の持ち主の桔梗にとって
こよなく愛したあの華やかな都の地からはるか離れた
冬には深い雪に埋もれるこの地での生活は
時の経過と共に
あまりにも過酷で忍び難い毎日となっていた。
唯一の楽しみは春先から秋にかけて咲く美しい野草達の花々を
見たり摘んだりすることだけで それだけが慰めであった。
どんなに歌を読んでもそれに応えてくれる
愛しい人も親しい友人も側にいないことは
この上なく寂しく辛く
悲しみで涙を流すばかりの毎日であった。
自分にいかほどの落ち度が無いとはいえ
運命によってもたらされた現状を
打開する具体的な方策も思いつかず
かつての親しくして来た眷族達との繋がりも断絶された
今の身ではもはや輝かしい夢など見ることさえも
叶わないと思うだけであった。
もはやこの地に暮らし続けることに
どれほどの意味があるのだろうと考えると暗澹たる思いであった。
桔梗の身を案じた両親の計らいで
桔梗の身を我が子の事のように心配する
かつて御所で女官として勤めたこともある年増の女が一人と
桔梗にいつも優しくされて来た事を感謝し続けている下人の
男女二人だけを伴ってなんとか暮らすことだけが許された
この人里離れた陸奥の家での暮らしが一生続くのかと思うと
今の我が身が惨めでどんどん絶望的になって
自身にもほとほと愛想を尽くし常に脳裏に浮かぶことは
「命を断つ」ということしか思いつかない日々を送っていたのだ。
その日も慰めを求めて野に咲く日光キスゲを見るために出かけたのだが
いつの間にか道に迷って湿原の方に向かって進んでいたのだった。、、
その7、リュウタン様伝説 竜胆・リュウタン
老婆が伝説の冒頭で語った
美少女の命を助けたという
草の神・カヤノヒメの孫の竜胆・リュウタンは
毎年10月(神無月)の出雲で行われる神々達の集まりで
草の神・カヤノヒメの後継者と決められた青年神であった。
彼は普通の神々の3倍もの大きな体を持って生まれたが故に
幼少時から力が強く長じるに及びその腕力を他の神々達も恐れるようになると
調子づいてますますそれを誇示するかのような乱暴者となっていた。
さらに生まれながらにして目鼻立ち整う男前で
神々の女達ですら惚れさせてしまう事が
勝手気ままをさらに助長させる原因にもなっていたのだ。
村里離れた薄暗い湿ったような草の生えた場所で生まれたが故に
神々の中で草を司る役目に就いた草の神・カヤノヒメは
今ではこうして間借りなりにもさわやかな草原でも
暮らす事が出来る様になり
草草全般を取り仕切る役目を任された女神として
これまで無事勤め上げ
儲けた4対八柱の子供達 8人にもそれぞれ成すべき役割が与えられ
神々の一員としてだけでなく人間世界からも
敬愛されるようになったことはひとえに
一家を挙げて誠実に役目を果たして来たからこそであるが
それもこれも八百万の神々の最高位に
君臨する太陽神・天照大神様の
「常々の愛情と後ろ盾がなければ果たせなかった事だ!」と
繰り返し幼い頃よりあれほど言い聞かせて来たのに
「今の孫の竜胆・リュウタンはどうだ!、、
とても恥ずかしくて天照大神様に合わせる顔も無い!、、
これでは彼に今後重要な役目をとても任せるわけにはゆかない!、、」
と憤慨しどうしたら良いものかと常々考えていたのだった。
一方
当の竜胆(リュウタン)は
子供の頃より敬うべきと教えられて来た
太陽神・天照大神様が目を光らせている昼間こそ
その威厳に恐れをなして
出来るだけ自分の棲家に閉じこもって乱暴をすることを避け
終日眠りこけるなどをして暮らしていたが、
太陽神が就寝し始める入相の頃になると目を覚まし
やがて夜の帳が下りると日毎外に繰り出しては
夜陰に紛れて自分がお気に入りの神々の若く美しい娘達の
寝所に忍び込み手籠にしたり、たぶらかしたりし
有り余る力を見せつける為に
少しでも気に入らない男神や神に逆らう不届な人間の男達に出逢うと
撲る蹴るの乱暴や悪戯をして傷つけるなど
最高位の天照大神様をも恐れぬ
手に負えない傍若無人な存在となっていた。
その8、リュウタン様伝説・草の神・カヤノヒメの一計
草の神・カヤノヒメの悩みは日に日に増していた。
日本というこの国をお作りになった偉大な神である
両親「イザナギ」様「イザナミ」様が自分をお産み下さり
二人から任されてきた
「草を司る神」の役目の後継者として、このままでは
孫の竜胆・リュウタンに到底跡を継がせるわけには行かないと
行く末を心配して草の神・カヤノヒメは一計を案じ
ある時4対八柱の8人の子供達の協力を得て
作為的に人間の男に乱暴を働くようにし向け
その際あらかじめ準備していた石につまづかせ
足に大きなコブを作らせることに成功した。
この足に出来たコブを治療してやるフリをして
草の神・カヤノヒメはこっそり毒薬を注入した。
この毒薬は誠に恐ろしいものであった。
竜胆・リュウタンが乱暴を働いたり悪さをしようとすると
その傷口が必ず開いて中の毒薬が吹き出して
たちまち竜胆の身体中に巡り
悶え苦しませるように仕組んだのだ。
一方で
竜胆・リュウタンが正義心を持って相手を
糺すためにその能力を使ったり
弱いものを助ける目的で行動をしたり
愛情を示し神らしい高邁な精神でことに当たる場合には
傷口から出た苦味の強い毒薬はたちどころに薬に変わり
傷ついた者達の苦しみを
治癒する効能をもたらすように図ったのだった。
そして竜胆・リュウタンをアキノワスレグサ(眠り草)を利用して
眠らせている間に自身が心から自覚し反省するまで当分の間
生まれ故郷の長野からはるか遠方の
毎年の厳しい冬の寒さを耐え忍ぶ必要のある
岩手・八幡平の安比高原にある
人気の無いジメジメした沼地にただ一人閉じ込めておくため
彼の大きなコブのついた足を太く長い根に変身させ
その沼地にしっかり縛りつけて
動けない様にしてしまったのだった。
その9、リュウタン様伝説・花リンドウの誕生
こうして草の神・カヤノヒメの逆鱗に触れたために
沼地に閉じ込められた竜胆・リュウタンには
一年の彼岸の時期だけ
地上の空気が吸えるように腕から茎を伸ばしその先に
控えめな釣鐘状の形の自然界では人の眼には見え難い
目立たない青紫色の蕾をつけさせた。
そして太陽神・天照大神様の照らす陽のご加護のお陰で
美しく可愛い花をつけられる事を重々承知している
草の神・カヤノヒメ配下の多くの
控えめな野草達同様の謙虚さを身に付けさせるために
陽の光を浴びた時にだけ初めて
思い切り大きく見事にその蕾が開花して
思う存分胸一杯呼吸が出来る
植物に変えられてしまったのだ。
さらに冬になると地上部を枯らし宿根だけで暮らす
暗くて長い地下生活を余儀なくさせて
薄い空気を吸うだけの我慢の生活を強いたのであった。
ただ八幡平の山頂付近の鏡沼から目だけは外の様子をいつでも
見れるようにしたのはせめてもの
草の神・カヤノヒメの孫に寄せる温情であった。
その後百年ほどは竜胆・リュウタンは祖母に恨み言を言ったり
罵しり続けて悔悛や反省の兆しはほぼ見られなかったが
当然ながらその度ごとに自らの身体から吹き出す毒薬の
猛烈な攻撃により耐えきれないような痛みで
苦しめられ続けたのであった。
しかしながら時が流れるに連れ
一年の僅かな秋の時期になると胸いっぱい
地上の新鮮な空気を吸えることがどれほど快適なことか
理解し始めた竜胆・リュウタンは
地上で花の蕾を付けて 天照大御神のもたらす
有難い陽射しを受けさえすれば必ず立派な花が開き
新鮮な空気を思い切り吸えると言う事は明確なので
自ら自重し悪事を働く考えが次第に弱まるにつれ
毒薬による猛烈な攻撃で苦しむことも無くなり
どんどん環境に馴染んで行ったのである。
するといつしか多くの人間達から「リンドウ!リンドウ!
美しい奇跡の花・リンドウ!」と名付けられ
絶賛され始めたのだ。
中でも賢く工夫をする人間が
竜胆・リュウタンの足の毛根を切り取って
それを煎じて飲んで「極めて薬効がある!」ことを
発見するとますます人々から珍重され始め
すると何故かあの大きなコブがみるみるうちに
小さくなっていったのである。
そして春まだ浅い頃になれば
鏡沼の「ドラゴン・アイ(竜の眼)」が
「極めて美しい!」などと村人達から褒めちぎられ
評判を聞いた者達が近隣からも続々訪れやって来るようになると
竜胆・リュウタンは自分自身が
人間達の心の慰めや病に依る苦しみから
解放されたり治癒されて
大いに役立っていることを知る事がまた
自分の喜びにもなっていくのに
次第に気が付き始めたのであった。
その10、リュウタン様伝説・桔梗との出逢い
こうしてその後瞬く間に数百年の月日は過ぎて行った。
草の神・カヤノヒメは
竜胆・リュウタンが祖母への抵抗心と
悪意を持った精神状態でいたり
地元の人間達に幸せをもたらさないまま過ごしている限り
足のコブの毒薬でいつまでも苦しめられ続き
祖母が期待するような美しい自分の花を咲かすことは能わず
また神の仲間に戻れることもあるまいと考えていた。
当然のことながら、八百万の神達も草の神・カヤノヒメの孫のことなど
すっかり念頭から外していたのであった。
しかしながら時が流れ時代と共に竜胆・リュウタンが、どんどん
心がけが良くなっていることを知った草の神・カヤノヒメは
たいそう喜んでそろそろ神の世界へ戻しても
良い頃であると実は考え始めていたのだ。
草の神・カヤノヒメのこの想いを決定的なものにしたのは
陸奥に幽閉された桔梗との出逢いが契機であったのだ。、、、
桔梗は幽閉された当初こそ塞ぎ込む日々を過ごしていたが
時の経過と共に男女二人の下人を通じて
知り合った村人達からも
その優しさゆえにいつの日か慕われ始めていた。
ただこのまま独り身のまま生涯が終わるのかという
寂寂たる想いはいつまでも消えないのであった。
桔梗は気分転換に秋になると村人達の間で評判になっている
美しいリンドウの花を摘みに行くのが楽しみになり
下人の男女二人を伴って度々安比高原に来ていた。
が夏にさしかかったその日、不意に思い立って
下人にも年増の女房にも告げることなく一人で
日光キスゲを見たくなって外出したのだ。
湿原に向かって進んだ桔梗は先ほど摘んだ日光キスゲの束を持ったまま
知らぬ間にどんどん八幡平の頂上付近まで近づいていた。
気がつくと青空に映える鏡沼のほとりに立っていた。、、、、
竜胆・リュウタンは毎年秋に花をつけると
村人達が喜んで摘んでくれることに幸福を感じていたが
ある時いつもの村人達の手とは明らかに異なる
手の感触に気がついた。
そこで鏡沼から「水も霧」を立ち上げて覗いてみると
この地に縛られて以来これまで一度も
出会った事が無い稀に見る若く美しい娘が
自分の腕先のリンドウの花を
掴んで摘んでいるからだと分かった。
その柔らかで真っ白な艶やかな手でそっと包まれると
自分の身体が火照って絵も言われぬ快感で
身体中の緊張が緩やかに溶けていくのであった。
竜胆・リュウタンはかつて毎夜のように
無礼を働いて来た神々の美しい娘達ですら
比較にならないほどの美貌で
優れた人間の女性が実際にいることを
初めて知ったのだ。
この時不覚にも神の孫であることも忘れて
清純無垢なこの美少女に
「一目惚れ」してしまったのだった。
胸が高鳴り、呼吸が荒くなってくるのを抑えきれない。
初めての自身の気持ちに素直に寄り添って
少女のなすがままにうっとりと酔いしれていた。、、、
以来秋の到来が待ち遠しく
秋になる頃は竜胆・リュウタンは
これでもかというほどたくさんの蕾をつけて
桔梗が又摘みに来てくれることを期待し
その思慕の情は日々募るばかりとなっていたのであった。
、、、、、、、
鏡沼の淵に立った桔梗は、この日は
何か遠目に見慣れたいつもの沼の様子と異なるものを感じていた。
鏡沼に映る自分の姿を見ていると何か水の底から
彼女を優しく熱い眼で見ている誰かがいて
こちらにおいでと抱擁するように手を差し伸べている気がしていた。
このままここに入水したらその人の懐に飛び込める。
きっと今の自分の窮状から救い出してくれる
「愛すべき理想の人」が待っているに
違いないように思えたのである。
次の瞬間 桔梗の身体は宙に浮いて水面に大きな飛沫が上がると
水中深く沈んでいった。手に持っていた日光キスゲの束だけが
水面の波に揺れて浮動していた。
その11、リュウタン様伝説・桔梗の生還
竜胆・リュウタンはこの日
愛しの桔梗の行動をずーと眺めて
様子を伺っていたのである。
鏡沼の淵に立ったかと思ったその瞬間
咄嗟に自分の目の前に落ちてきた
桔梗の身体を慌てて抱き抱えた。
まさか愛しの相手が、自分の懐に飛び込んでくるとは
思ってもみなかっただけに
胸が高鳴り一瞬戸惑った、、が
すでに呼吸が停止しているように見えたので
なんとかして地上まで運ばなくては、、、
どうしても大切なこの娘の命を救わねば!
長い年月封印されてきた自分の真の力を
今こそ役立てる日が来たのだという
感極まる熱情が湧き上がり
これは運命が変わる前兆だとはっきりと思えたのであった。
するとその瞬間
竜胆・リュウタンは窪地に縛り付けられた植物のリンドウから
数百年ぶりに元の草の神・カヤノヒメの孫の姿に戻っていた。
抱き抱えていた桔梗を地上に引き上げて横に寝かすと
すぐさま竜胆・リュウタンは自分の
今や小さな黒子ほどの足のコブを噛んで削り
口に含んで噛み砕き
固く閉じて青白み帯びた桔梗の唇に当て
口づてにその唾液水を飲ませたのだ。
もはやその苦い唾液水は毒薬ではなく命を蘇らせる良薬となっている
ことが分かっていたからであった。
、、、、
すると間も無くして桔梗は腹部に溜まった水を
どっと口から思い切り吐き出して
たちまち命を取り戻したのであった。
桔梗は息を吹き返すと
水の中に飛び込めば自分の運命を変える
理想の男性に抱かれると思い願った通り
今目の前で素敵な若者に笑顔で
抱き抱えられていることを知ったのだ。
「願いは叶った!やっと運命の人に出逢えた!」
涙が自然に溢れ出て止まらなくなったのであった。
桔梗に竜胆・リュウタンが求婚したのはそれから
間も無くのことであった。
ただこの様子を見ていた草の神・カヤノヒメが問題としたのは
神の血を引く者と人間が夫婦として交わることが神の世界で
許されるかということであった。
その年の10月(神無月)出雲の神殿で行われた
八百万の神々の集まりで
1000年を優に超えて草の神から申し出があった
孫の竜胆・リュウタンと人間・桔梗との結婚の
許可申請の裁定が行われたのは当然の事であった。
その12、リュウタン様伝説・再び神々の世界へ 最終回
日本全国から集まる神々の出雲会議では
毎年八百万の神々達がそれぞれ抱える諸問題の裁定が行われるが
久しぶりのカヤノヒメ一家の問題に会議はざわついた。
がさほど異論も無く結論に至った。
まず桔梗に関して
人間桔梗の高貴なこれまでの立居振る舞いや
味わった辛い苦難の日々等々を様々な方法で
調べ尽くして出た判定は
桔梗を神の地位まで引き上げるべく
様々な決まり事を学ばせた後に神となる儀式を済ませ
草の神カヤノヒメの一族に加える事!
そして、竜胆・リュウタンには、
陸奥の多くの人間達から敬愛され始め
もはやかつての乱暴狼藉をもう決してすることは
ないであろうと思われるので改めて
陸奥之狭土神(ムツノサズチノカミ)の称号を下し
今後陸奥の自然と人々の安寧と治安と幸福に
資する役目を与えさせる事!とされた。
竜胆・リュウタンは陸奥の人々の為に桔梗共々
今後も誠意を込めて尽くし続けたいと
かねてより思って来ただけに
この裁定を聞いて非常に喜んだのは言うまでもない。
二人の婚姻が許された後に
竜胆・リュウタンと妻の桔梗との間に生まれた
たくさんの子供達が
その後日本全国に散らばり
エゾリンドウやオヤマリンドウ、アサマリンドうという名で
秋に花をつける植物達となって増え
竜胆・リュウタンが念願していた
春リンドウやフデリンドウという名の
春に花を咲かせる子供達までも授かったのであった。
さらに喜びは桔梗にも増幅された。
神に格上げされた桔梗は
産んだ娘達が京都や奈良の地に住み着いて
人間達にはリンドウと中々区別がつき難い
夏から花を咲き始める「キキョウ」という植物に
生まれ変わり「秋の七草」として
毎年人々から慕われるようになったことが
誇りでもあり、
またあの慣れ親しんだ生まれ故郷の京の都へ
子供達に会うために少なくとも年に一度は
戻れることが出来るようになったからである。
宝来玄黒は老婆の語ったこの長い長い伝説を聞いた後
リンドウの花言葉が「誠実な人柄」「正義」
「悲しんでいるあなたを愛する」などであり
そして桔梗の花言葉には「永遠の愛」「誠実」「気品」「清楚」などが
含まれている事を知って「成程!」と思ったのであった。
ただ自分の体験と重ね合わせても夢か現実か交錯して
ただの伝説だとはどうしてもいまだに思えないでいる。
(2025年 正月に終稿)
